国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話
展覧会の内容
ベルリン国立博物館群エジプト博物館のコレクションから約130点を展示する展覧会『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』へ行ってきました。
知られざるエジプト神話を貴重な出土品やアニメーションと共に紹介します。
芸術性の高いデザインが施された、棺桶・レリーフ・装飾品・書物の数々。
古代エジプト人の高い美的感覚と、多くの現代人が持たない神への熱い信仰心が伝わります。
天地創造の神話への憧れと、紀元前に作られた作品を数千年後の今見ることができる感動に溢れる展覧会でした。
展示風景
プロローグ
この世界は、天も地もない全くの暗闇で、「ヌン」と呼ばれる混沌とした「原初の海」だけが存在していた。
その大海から自力で出現したのが創造神アトゥムである。
初め、アトゥム神は大海の中を漂っていた。
やがて、大海の中から「原初の海」と呼ばれる小高い丘が出現した。
その丘に這い上がったアトゥム神は、自力で大気の神シュウと湿気の女神テフヌウトを生み出した。
シュウ神とテフヌウト女神は夫婦となり、彼らの間に、大地の神ゲブと天空の女神ヌウトが誕生した。
しかし、ゲブ神とヌウト女神は片時も離れない。
そこで、父であるシュウ神が2神を引き離し、天と地を分け、その間に大気が存在することとなった。
その後、ゲブ神とヌウト女神の間には、オシリス神、イシス女神、セト神、ネフティス女神が誕生。
創造神アトゥム、シュウ神、テフヌウト女神、ゲブ神、ヌウト女神、オシリス神、イシス女神、セト神、ネフティス女神の九柱は、創世神話に関わる重要な神々として、ヘ
【1】天地創造と神々の世界
古代社会では、天体・自然現象・植物・生物などあらゆるものが、全知全能の神々によって創造されたと考えられていました。
暗闇が支配する混沌とした原初の海「ヌン」から、神々の意志で「秩序ある世界」が創造されたと伝えられてきました。
古代エジプトではこの秩序を「マアト」と呼び、様々な天地創造を描いた神話が語り継がれています。
「腹ばいになる山犬の姿をしたアヌビス神像」
死者の体をミイラ化しあの世へ導くアヌビス神
「ホルス神に授乳するイシス女神の小像」
玉座に座りホルス神に授乳するイシス女神
「ハヤブサの姿をしたホルス神の小像」
冥界の支配者オシリス神の息子ホルス神と太陽神ラーの象徴であるハヤブサ
「ナイルの神の像(上半部)」
豊穣をもたらすナイル川の氾濫の兆候のシンボルである両性具有のハピ神
「セクメト女神座像」
圧倒的な破壊力で病気を治癒し人々を救済するセクメト女神
「膝まずき供物を捧げるナイルの神ハピ」
豊穣をもたらすナイル川の氾濫の兆候の象徴である両性具有のハピ神
「セクメト女神立像(上半部)」
戦争の女神としてエジプトの地を敵から守るライオン頭のセクメト女神
「パピルスの茂みの中にいるヘフ神の装飾を施した精油を塗るための匙」
無限の時を象徴するヤシを手にするヘフ神
「バステト女神座像」
癒しの女神として人気を博したバステト女神
【2】ファラオと宇宙の秩序
宇宙全体を支配する秩序・摂理の「マアト」は、個々の人間が生きていく中で遵守すべき規範・道徳として考えられていました。
人間社会のリーダーであるファラオは、社会の中で「マアト」を遵守し遂行する最高責任者でした。
異民族の侵入やファラオへの謀反に対して、ファラオは強いリーダーシップを持って「マアト」を実践していきました。
「ハトシェプスト女王あるいはトトメス3世のスフィンクス像頭部」
夫トトメス2世の死後にファラオとして戴冠したハトシェプスト女王
「メンフィスのプタハ大司祭の墓出土のレリーフ」
右側に埋葬された人物が描かれたレリーフ
「サティス女神とアヌキス女神に捧げられたプトレマイオス1世の供物盤」
穀物・花・ビールなどの供物が入れられた容器
「デモティックが記された香炉」
宗教的日課として神々の像にお香を焚く際に使用された香炉
「宗教的儀式に使用されたメニトのおもり」
パピルスの茂みに浮かぶ船の上に立つ牡牛の姿のハトホル女神
「太陽の船に乗るスカラベを描いたパネヘシのペクトラル」
冥界の死者に新しい命が与えられることを願った胸飾り
「プタハメス墓のピラミディオン」
高級官僚のお墓の上部構造に設置された太陽信仰を表す小ピラミッド
「ネフェルトイティ王妃あるいは王女メリトアテンの頭部」
自然で理想的な顔の形が成形されたエジプト美術の彫像
【3】死後の審判
古代エジプトでは、人間が考えたり感じたりする器官は脳ではなく心臓だと考えられていました。
死後、死者はミイラ作りの神アヌビスによって「2つのマアトの広間」に導かれ、42柱の神々の前で死後の審判を受けました。
死者の心臓と「マアト」を象徴する羽根が天秤で釣り合わない場合、その心臓は幻獣のアメミトに食べられました。
天秤が釣り合う場合は、死者は冥界の支配者であるオシリス神のもとに連れていかれ、再生と復活が保証されました。
「タレメチュエンパステトの死者の書」
死後に必要な知識と呪文を記した挿絵
デモティックの銘文のあるパレメチュシグのミイラ・マスク」
複数の守護神とその象徴が描かれたミイラ・マスク
「タシェリトエンアメンという名の女性のミイラのカルトナージュ」
死者の神性さを強調する金色のカルトナージュ
「上部が丸くなった棺形のシャブティ・ボックス」
来世で死者の労働を代行する人形を納めるための木箱
「ハトホル女神の象徴のある柄鏡」
愛・喜び・美の象徴であるハトホル女神
「ロータス花弁形ペンダントのネックレス」
紀元前1550年~1070年頃に制作されたネックレス
「クウイトエンプタハの偽扉」
現世と来世の境界の役割を果たした偽扉
「ラー神とハトホル女神の神官マアケルウブタハの供物台」
お酒や食べ物を入れるための窪みを持つ供物台
「3匹の魚とロータスを描いた浅鉢」
1つしかない頭で創造神の神性の統一と多様性を表現した鉢