Cosmo-Eggs|宇宙の卵
展覧会の内容
人間同士や非人間との共存がテーマの展覧会『Cosmo-Eggs|宇宙の卵』へ行ってきました。
空間・言葉・音楽・映像が共存するインスタレーションにドキュメントやアーカイブを加え紹介します。
1895年から2年に1度開催されている現代美術の国際展覧会のヴェネツィア・ビエンナーレ。
1956年に竣工した日本館は、アーティゾン美術館を運営する石橋財団の創設者の石橋正二郎が寄贈した建物です。
日本館のテーマ「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」は、世界各地に伝わる卵生神話に由来するもの。
人類学者の石倉敏明がアジア各地の津波神話を参照し、人間と非人間の関係を再考する新たな神話を創作。
異なる能力・言語・文化を持ち、それぞれの島で暮らす3つの部族。
互いに船で行き来し、時に争うこともあったが、天災・凶作・疫病を乗り越えて長い間共存しました。
キュレーターの服部浩之を中心に、美術家・作曲家・人類学者・建築家など様々な専門家が協働する展覧会。
空間全体が調和し共振する瞬間もあれば、不協和音を奏で衝突する瞬間もある。
「異なるものたちが、異なるまま共存することは可能か?」という問いの基、支配や同化に拠らない共異体的共存の在り方を探求します。
このレポートを執筆している2020年の秋、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中が前代未聞の緊急事態下に置かれています。
パンデミックをきっかけに、政治・経済・社会・組織・個人に潜んでいたあらゆる問題が表面化。
国・地域・組織・個人単位の助け合いもあれば、価値観や思考の違いによる分断も多発しています。
様々な物事が多極化する時代に、自分が生きたい世界像を考えさせられる展覧会でした。
展示風景
様々な専門家の協働で生まれた展示作品を紹介します。
全体の展示風景
「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」公式ポスター
デザイナー 田中義久
日本館の壁に彫り込んだ創作神話を石墨で擦り取ったフロッタージュを採用しました。
「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」企画書・会場模型
建築家 能作文徳
吉阪隆正が設計した日本館の空間を読み解き、異分野の作品群を繋ぎ建築と呼応する会場を設計しました。
津波石
美術家 下道基行
津波によって海底から陸地に打ち上げられた石垣島の津波石をループ撮影した映像作品。
渡り鳥が巣を作り、植物が繁茂し、人間が名前を付け、信仰の対象となる津波石。
何百年・何千年もただそこに留まり、様々な存在と関係性を築く津波石の歴史に思いを馳せる作品です。
COMPOSITION FOR COSMO-EGGS”Singing Bird Generator”
作曲家 安野太郎
鳥のさえずりのような音楽を奏でるリコーダーの自動演奏を、2,000ページを超える楽譜に起こしました。
各リコーダーに割り当てた0から11までの数字を、演奏順序を表す数列に起こしました。
「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」フロッタージュ
制作 下道基行/安野太郎/石倉敏明/能作文徳/服部浩之
日本館の壁に彫り込んだ創作神話を石墨で擦り取ったフロッタージュ。
言葉を物質化したフロッタージュは、プロジェクトの共異体的協働を象徴しています。
「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」会場再現
制作 下道基行/安野太郎/石倉敏明/能作文徳/田中義久/HIGURE17-15cas
コンクリートのエントランスは段ボール、大理石の床はPタイルに置き換え、90%のサイズで復元。
4つのスクリーンに映し出される、石垣島の津波石をループ撮影した映像作品。
会場中央の空気椅子は、リコーダーへ空気を供給する肺の役割を果たしています。