RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー
会期 | 2019年1月24日(木)~ 2019年3月24日(日) |
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会場 | TOTOギャラリー・間 |
住所 | 東京都港区南青山1-24-3[地図] |
アクセス | 乃木坂駅 徒歩1分 |
公式サイト | TOTOギャラリー・間 |
展覧会の内容
スペイン・カタルーニャ地方ジローナ県の都市オロットを拠点に活動するRCRアーキテクツの展覧会『RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー』へ行ってきました。
地元に根差し詩情豊かな建築を生み出してきた彼らの活動をドローイング・模型・映像と共に紹介します。
ラファエル・アランダ(Rafael Aranda)カルマ・ピジェム(Carme Pigem)ラモン・ヴィラルタ(Ramon Vilalta)が代表を務めるRCRアーキテクツ。
豊かな自然環境に身を置くことで守られた純粋さと育まれたセンスが持ち味。
2017年には建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞。
地元にベースを置きながらも世界にインパクトを与える制作活動を続けてきたことが評価されました。
誰かが何かを担当するという分業制ではなく皆一緒に設計のプロセスに参加する。
「I」ではなく「We」でお互いを支え合い共有することでシナジー効果を生み続けるチームワークの強さを知る展覧会でした。
展示風景
気になったプロジェクト
RCRアーキテクツを構成する3つの軸足
リサーチや創造の横断性に対する開発のために開かれた建築研究施設 RCR Lab・A
1988年にオロットに設立された建築創造スタジオ RCR Arquitectes
建築・ランドスケープ・芸術・文化全体の社会的価値に対する認識向上のために設立された財団 RCR Bunka
ベル=リョク・ワイナリー:Bell-Lloc Cellars
場所 | スペイン・ジローナ県・パラモス |
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土地の隆起が活かせる敷地の選定にこだわりワイン庫を地下に眠らせたワイナリー。
「地下よりも静かな場所はない、そして太陽が刻む時間以上に明確なリズムはない。
地下に下りて、光と涼しさの有難さを再び発見すること。
それこそが、ここで熟成されるワインが堪能しているものなのだ。」
ラ・リラ・シアター・パブリック・スペース:La Lira Teatre Public Space
場所 | スペイン・ジローナ県・リポイ |
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利用者が建物に刺激を与え建物がそれに応えることで成り立つ「空」の空間が魅力の野外シアターホール。
「空間は、その境界が定められた時に現れる。
それは連続する時に流れ、それを観る者はその枠を演じることによって空間を知覚する。
このヴォイドは、市民がそこで息づくことによって定められた空間なのである。」
スーラージュ美術館:Soulages Museum
場所 | フランス・アヴェロン県・ロデーズ |
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耐候性の高いコルテン鉄鋼のユニットからなるフランスの芸術家ピエール・スーラージュの美術館。
「我々の活動に秩序をもたらす建築は、絵画にとっても秩序をもたらすことができるだろう。
それは大地から出現し、間隔を置いて適切に配された複数の箱である。
人々が絵画を鑑賞できるように、そして人々が互いの存在をよく見ることができるように。」
ラ・ヴィラ:LA VILA
場所 | スペイン・ジローナ県 |
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人々の知覚に対する意識を変容させるための研究所でありRCRの夢を具現化するプロジェクト。
広大な自然の中に工房・宿泊施設・パヴィリオンなどを作り続けていく。
「大文字の自然は、個人にとっても建築にとっても無尽蔵にインスピレーションを与えてくれる源泉である。
ラ・ヴィラは、広く深い森と水、そして記憶が蓄積されている場所であり、私たちは2002年にそこに建つ家屋と池の改修プロジェクトを手掛けたことがきっかけでその土地と巡り合い、現在は、そこに創造のための開かれた研究施設を作ろうとしている。
その研究施設の目的は、人々の知覚に対する意識を変容させ、新しい関係と振舞いを促すことである。
それ自体が抱えている複雑さの更に先にある、横断的で総合的、そして可能な限り最も本質的で純粋な、そういう施設になることを願っている。
それは、ほとんど隠されたような辺境の場所から世界に繋がる、後世の人たちにとっての参照となるだろう。
そこで何かを起こす人のために、そこで起こっていることのために、そこを訪れる人々のために、そこで起こる魔法のために、つまり、そこで生まれる創造性のために。」
紙のパヴィリオン:Paper Pavilion
場所 | スペイン・ジローナ県 |
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ラ・ヴィラ内に建設予定の奈良県吉野町の吉野杉を使用したパヴィリオン。
僧侶兼詩人のティク・ナット・ハンと宮大工棟梁の西岡常一そして日本の木の文化全てに捧げられる。
中庭に展示されたパヴィリオンの部分モックアップは展覧会後に移築され実際の建築の一部となる予定。
書かれた、そして描かれた風景:Written and Sketched Landscape
ラ・ヴィラで実現しようとしている夢のイメージを和紙に描いた水彩画。
夢のジオグラフィー:Geography of Dreams
「私たちにとって人生とは夢である。
建築とは夢を見るための道具であり、私たちは夢と建築を通して現実を創造し、この人生という道を辿っていくのだ。」
講演会
日程 | 2019年1月24日(木) |
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タイトル | 夢のジオグラフィー |
講演者 | カルマ・ピジェム氏 |
今回の展覧会や建築への取り組みについての話を簡単にまとめます。
RCRのプロジェクトを語る際に度々使用される「魔術的な感じ」とは何か?
スペースの利用者がそこで感じるエネルギーや神秘的な雰囲気を指す。
様々な素材を使用しながらも空間としての均一性や同一性を意識し静寂を大事にしている。
ヨーロッパの教会と日本の社寺で感じる違いは?
ヨーロッパの歴史的建造物は石造が多く日本の歴史的建造物は木造が多い。
素材が持つ概念や能力がそれぞれ異なり奈良の木造建築からは強さを感じた。
日本の建築や風景に恋をしたという感情の所以は?
建築の良さはその土地の文化によって解釈することができる。
自然をリスペクトし自然との関係性がある建築に恋をした。
日本の都市部についてどんな印象を持ってる?
東京はバラエティ豊かな建物が混在するコントラストが多様な場所。
郊外が廃れがちなヨーロッパの都市部と比べ地区それぞれに特色がある点が異なる。
悲観的にならざるをえない現代社会についてどう考えてる?
確かに世界は良い状態とは言えず過剰な資本主義に私たちは批判的な姿勢を取っている。
それでも夢を実現するために努力し戦ってほしいと若い人たちに伝えたい。
吉野杉を使用したラ・ヴィラのプロジェクトは国を超えた気持ちの重なりで動いている小さな革命。
自分ができることから行動し未来に希望を持って少しずつ変えていくことが大切。