田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research
会期 | 2018年10月18日(木)~ 2018年12月23日(日) |
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会場 | TOTOギャラリー・間 |
住所 | 東京都港区南青山1-24-3[地図] |
アクセス | 乃木坂駅 徒歩1分 |
公式サイト | TOTOギャラリー・間 |
展覧会の内容
フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め幅広い注目を集める田根剛氏の2会場同時開催の展覧会『田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research』へ行ってきました。
建築における思考と考察のプロセスと考古学的リサーチの方法論を模型や映像と共に紹介します。
2006年に行われたエストニア国立博物館の国際設計競技で勝利を収めた当時26歳の田根氏。
「Memory Field」と題された本プロジェクトを機に「場所の記憶」から建築を考える設計手法を確立。
フランス文化庁新進建築家賞・フランス国外建築賞グランプリ・芸術選奨文部科学大臣新人賞など受賞多数。
2012年よりコロンビア大学建築学部で教鞭を取るなど世界から注目を集めています。
展覧会では田根氏がどのプロジェクトにおいても実施するリサーチ手法を展示室の壁全体で再現。
場所から連想される膨大なイメージを壁面に貼り分類&調査を繰り返すことで思考を整理する。
「記憶」という概念そのものをリサーチする考古学的リサーチは暗号を解くようなワクワク感があります。
私たちは派手で新しい建築を作りたいわけではない。
私たちはむしろ、その場所に属し、深い部分に記憶を持ち、過去のものを未来に繋げることができる建築を作りたい。
「創造性」「実験」「チャレンジ精神」「ものづくり」の場としての Atelier Tsuyoshi Tane Architects。
プロジェクトの大小に関係なく徹底的なリサーチを行い歴史を掘り下げる。
その場所に相応しい建築を創造するために本質を捉える努力を怠らない姿勢に感銘を受ける展覧会でした。
展示風景
「記憶」という概念そのものをリサーチする考古学的リサーチ。
アイデアの発掘と収集から始まる思考と考察の痕跡をプロジェクト別に紹介します。
エストニア国立博物館
1991年にソビエト連邦から独立したエストニアの象徴となる国立博物館。
かつてソビエト連邦の軍用施設として使用されていた滑走路の延長線上に建設。
「軍用滑走路という重い歴史から、ゆっくりと大地が隆起し、空へ向かって延びていく。」
負の遺産を無かったものとして消し去ることなく次世代に継承し未来の記憶を繋ぐ建築です。
デンマーク自然科学博物館
デンマークの首都コペンハーゲンに建つ博物館の国際設計競技案。
2棟のパビリオンを繋ぐ遺跡発掘現場のような地下空間と屋上のボタニカルガーデン。
「自然には発見の喜びがある。」
事実と不思議からの絶え間ない飛行という科学的発見のプロセスを楽しむ建築です。
LIGHT is TIME
精密・電子機器の製造会社CITIZENが2014年のミラノサローネで出展したインスタレーション。
4,000本以上のワイヤーで吊るされた約80,000枚の時計の地板が作り出す時が止まったような空間。
「光は時間であり、時間は光である。」
”光によって時間が変わる”という概念を表現した幻想的なインスタレーションです。
千總本社ビル
京都府京都市にある京友禅の老舗千總本社ビルのリノベーション。
着物の精神と伝統を継承しつつ着物の枠を越えた新しい体験を提供したい。
「日本の美とは「わび・さび」に象徴される禅的で簡素な美との認識が高い。しかし、日本にはもう1つの美として「かび・みやび」(華美・雅)がある。」
着物メーカーのトップブランドに相応しい豊饒な空間表現を試みた建築です。
フォンテーヌブロー週末住宅
フランスのパリ郊外の都市フォンテーヌブローに建つ住宅。
歴代のフランス王が愛したお城や王族の狩猟地として使用されていた広大な森を持つフォンテーヌブロー。
「森の中に建築を作ることは、建築と森林との柔らかな関係性によって成立している。」
周囲の風景のスケールと距離感を探りながら内から外へと広がる建築です。
メッセージ
建築は記憶を継承し、この時代を動かし、未来のその先の記憶となります。
まだ誰も見たことのない未来の記憶をつくること、建築にはそれが可能だと信じています。
いま私は、記憶は過去のものではなく、未来を生み出す原動力だと考え始めました。
場所の記憶からつくる建築は未来の記憶となる、それを”Archaeology of the Future”呼んでいます。