ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト–

ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト–_1
会期 2018年5月26日(土)~ 2018年7月16日(月)
会場 建築倉庫ミュージアム
住所 東京都品川区東品川2-6-10[地図
アクセス 天王洲アイル駅 徒歩4分
公式サイト 建築倉庫ミュージアム

展覧会の内容

近代建築5原則を提唱し合理主義的な考えと技術革新を伴い発展する世界を目指した建築家『ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト–』へ行ってきました。

インドのチャンディガールを例に異質の環境下におけるクリエイションとエレメントの関係を考察します。

1947年にイギリスから独立したインド。

パキスタンとの分離独立で二分された北西部のパンジャブ州に自由の象徴となる新都市の建設を決定。

ヒンドゥー教における戦いの女神チャンディからチャンディガールという名が付けられました。

 

初代首相ジャワハルラール・ネルーはアメリカの建築家アルバート・メイヤーに設計を依頼。

しかし協働設計者であったポーランドの建築家マチュー・ノヴィツキが航空事故で死去し計画が中断。

新たな設計者として指名されたのがモダニズムの旗手コルビュジエでした。

 

1951年63歳にして初めてインドを訪れたコルビュジエ。

人・動物・植物が渾身一体となり暮らす都市で出会った母国と全く異なる自然環境や気候風土。

これまでのコルビュジエの思想を大きく揺さぶり人生のターニングポイントとなりました。

 

近代都市的なメイヤーの原案を踏襲する一方で田園都市的な独自の構想を盛り込む。

自然との関係性・思想・世界観・宇宙観に向けられた深い洞察と絶え間ない対話から導かれた建築の姿。

成熟期を迎えた建築家が独自に到達した洗練さとは全く異なるプロジェクトが誕生しました。

あの巨大な果てしない土地で、不安と煩悶の中に、決定をしなければならなかった。

悲痛なる自問自答。

私は一人で評価し、決定しなければならなかった。

もはや理性の問題ではない。

ただ感覚の問題である。

チャンディガールは支配者や君主や国王の町のように、城壁を巡らされ、隣同士が重なり合っているような街ではない。

平原を埋めることが先決だった。

図形的な操作は、誠に知的な彫刻なのであった・・・。

つまり空間との戦いであり、心の葛藤である。

算術的・組成的・図形的なもの全てが、完成された時に見えてくる。

今は牡牛や山羊たちが毛布に追われながら、太陽に焦がされた野原を横切るだけである。

伊東豊雄氏や妹島和世氏など第一線で活躍する建築家も大きな影響を受けたチャンディガール。

人の心を動かす何があるインドで心揺さぶられる体験をしてみたいと思う展覧会でした。

展示風景

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チャンディガールプロジェクトへの想いとインドの代表作を展示したホワイエ。

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パンジャブ州の平面図とマスタープラン。

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全体配置図とセクター平面図。

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チャンディガールの資料と模型・コルビュジエの手による美術作品・ホンマタカシ氏の写真と映像を紹介するメイン展示室。

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チャンディガール建築群の配置図を描いた床。

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ヒマラヤ山脈を背景としたプロジェクト全体の立面図。

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蜂の巣状の日除けを取り入れた壁面が特長の総合庁舎。

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牛の角をイメージした雨樋が特長の議事堂。

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太陽光の原理を学ぶ影の塔と110平方メートルの住宅。

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武器を持たない平和への願いが込められたオープンハンド・モニュメントと国民を守る傘の屋根が特長の高等裁判所。

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総合庁舎の模型。

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総合庁舎の模型。

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総合庁舎の模型。

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総合庁舎の模型。

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気候条件への適応スタディ。

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総合庁舎の写真。

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議事堂の模型。

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議事堂の模型。

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議事堂の模型。

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議事堂の模型。

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周辺環境を伴った議事堂の透視図。

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議事堂の写真。

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住宅の気候条件への適応スタディ・断面図と平面図・植栽の統合表。

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高等裁判所の模型。

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高等裁判所の模型。

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高等裁判所の模型。

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水盤に面した高等裁判所のファサードの透視図。

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高等裁判所の写真。

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高等裁判所の写真。

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チャンディガールの滞在スタンプ・カレンダー。

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1951年から1964年の間に計23回インドを訪れ滞在ごとにスタンプを制作し図面に押印しました。

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新都市誕生のデッサンと「アルバム・パンジャブ」「アルバム・二ヴォラ1」「直角の詩」に描かれたスケッチ。

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コルビュジエの従弟ピエール・ジャンヌレがデザインした「イージー・アームチェア」「ラウンド・コーヒーテーブル」

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年のコルビュジエの境地を表現したリトグラフ「二つの間に」からコルビュジエの言葉たちを紹介。

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「これは、なんでも説明できる気になっている人に。『どうして?』にいつも答えがあるわけでなし。」

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「牡牛のしるしが表れたのは我が六十代を通してのことだ。人間このくらいの齢になると、生命力は萎えたりもする。が、もしこれがそんな習いを無視して、心・頭・腹に宿れば?それは活力・膂力・慣性に加わる衝動と衝撃の連続だ。」

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「これはアジアの目覚めを表現したと言える色々な場所からやってきた、様々な要素。石でできた呪物。銅でできた戦士。水牛が老衰して死につつある。穏やかに家の前で。」

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「すべての空間による、すべての空間に対する呼応。」

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「対話はいつでも実現しうる。極どうしのあいだで。こちらの岸と向こう岸とで。」

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