期間 | 2018年6月19日(火)から2018年9月17日(月) |
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場所 | 東京都千代田区北の丸公園3-1[地図] |
交通 | 東京メトロ東西線 竹橋駅 徒歩2分 |
詳細 | 東京国立近代美術館HP |
ゴードン・マッタ=クラーク展
「ゴードン・マッタ=クラーク展」の内容
1970年代にニューヨークという資本主義の実験場で活躍した芸術家「ゴードン・マッタ=クラーク展」へ行ってきました。
取り壊し前の建物を切断した代表作ビルディング・カットをはじめ約200点を展示します。
外界から閉ざされたミュージアムの空間に対して懐疑的だったマッタ=クラーク。
プロジェクトの多くは展示空間を外部へ開いたり既存の制度に介入する行為として実践されました。
建物に穴を開けたり壊したりすることで生まれる新しい景色。
日常生活においてどれだけ多角的な見方が出来ているのかということを観る者に問いかける作品たち。
社会の闇に焦点を当てた作品からは偉大な権力に抵抗し風穴を開けようとする強い意思が感じられます。
35歳という短い生涯ながら多大なエネルギーをアートに注いだマッタ=クラーク。
様々な危険とリスクを伴いながら命を燃やし続けた軌跡は観る者の胸を打ち続けます。
自己の探求心に素直に従いどれだけのエネルギーを注いで生きているかを問われる展覧会でした。
ミュージアム(1969年から1971年)
自宅兼スタジオで継続的に制作されたアートワーク。
ゼラチン状のテングサをベースにした液体に様々な食物や瓦礫を混ぜ煮立たせたり発酵させたり。
1970年6月の展覧会ではそれらの作品を多数吊り下げたブドウのつるを壁全面に配置。
展覧会のポスターには作品の材料となった食物や瓦礫などの内容成分を記載。
テングサの表面で活動を続けるカビが今この瞬間に引き起こす様々な変化を目にする展示となりました。
木の素描(1969年以降)
樹木に関するデッサンを独特のタッチで多数描いたマッタ=クラーク。
文字や暗号に変形させたデッサンから樹木を建築とみなし屋根や格子状に変形させたデッザンまで。
葉の部分に回転するような動きが表された一群のスケッチは「エネルギーの樹」と呼ばれています。
万物が水・火・土・空気の四大元素から構成される錬金術に興味を抱いていたマッタ=クラーク。
木の素描を通して世界の成り立ちを探っていたのかもしれません。
ツリー・ダンス(1971年)
ニューヨークのヴァッサー・カレッジ・ギャラリーで披露したプロジェクト。
大学の礼拝堂の前にあるオークの大木に縄ハシゴ・ブランコ・ハンモックのような布を設置。
そこに数日間滞在する許可が得られなかったため1日限りのパフォーマンスを行いました。
重力とせめぎ合いながら変形するナイロンや揺れる紐により刻々と生じる新しい空間。
人間の自己満足から導き出される住宅設計から距離を置き新しい生き方への手掛かりを模索しました。
壁(1972年)
ブロンクスやロウワー・イースト・サイドにあった低所得者向け住宅を中心に撮影したプロジェクト。
剥がれかけた壁紙や塗装・壁際に残る汚れやシミ・羽目板や配管用の穴など。
内部が剥き出しになった取り壊し途中の建物に残る様々な形象が写し取られています。
これらの写真を新聞用紙に印刷しディテールを抽象化させたインスタレーション。
現実の壁を覆う表象の壁としてギャラリーの内部に路上の光景を出現させました。
ブロークン・フロアー:ボストン・ロード(1972年後半から1973年)
巨大団地や高速道路の建設により旧市街の破壊が続いていたニューヨークの空き家で行われたプロジェクト。
床や壁の一部をノコギリで四角く切り抜き1つの空間からもう1つの空間への視界を生み出す。
奈落として現れる階下・仰ぎ見る高さへと貫かれる天井・騙し絵のように入り組んでくる壁。
空間を二次元に短縮する写真の効果が空間の感覚への疑いを生じさせることを発見。
マッタ=クラークの写真と断片は都市開発の中に隠された場所に人々を導きました。
ウィンドウ・ブロウ=アウト(1976年12月)
マンハッタンの建築都市研究所(IAUS)が主催した「モデルとしてのアイデア展」の出展作品。
新たな方法論による建築の提唱を試みるシンクタンクとして著名建築家たちによって設立されたIAUS。
一方でアフリカ系・ヒスパニック系の人々を締め出す住宅供給計画が進行していたマンハッタン。
マッタ=クラークはオープン前夜にモデルガンで展示室の窓を割り展示を完成させます。
建築と都市計画の制度の閉鎖性と都市生活を抑圧する進歩主義的な建築を問いを投げかけました。
スプリッティング(1974年)
ニュージャージー州のイングルウッドで再開発のための立ち退きが行われた空き家のプロジェクト。
2.5センチ間隔で2本の線を引き電動ノコギリで削りながら隙間の素材を除去。
土台のブロックの一部を掘り除き家の後部を下に降ろすことで家を真っ二つに切断。
構造と荷重・壁と開口部・床と階段といった家を構成する様々な関係に揺さぶりを掛けます。
切り取られた屋根の四角はギャラリーの展示物となり切り取られた写真は小さな写真集へと姿を変えました。
日の終わり(1975年)
マンハッタンのハドソン河岸に建ち並ぶ19世紀に建設された荷揚げ倉庫で行われたプロジェクト。
倉庫内で太陽が空間を横切るのを見ながら構想を練ったマッタ=クラーク。
床を一定の幅で切り取ることで水路のように露出した足場の下の川。
屋根と壁を切り取ることで建物内に射し込み移動する日の光。
マッタ=クラークはこの倉庫をキリスト教のバシリカのようだと述べています。
ヤコブの梯子:ドクメンタ6のための提案(1977年)
ドイツ中部の都市カッセルで5年に1度開催されている国際現代芸術展「ドクメンタ」の出展作品。
工業都市としての歴史に着目し複数の煙突の間に網を張り空間を制作。
地上の生活から抜け出し空と大地の間に新たな居住空間を作ることを想像していたマッタ=クラーク。
70メートルを超える煙突と地面を斜めに繋ぐ構造物が制作されました。
旧約聖書の創世記で天に架けられたハシゴを登り下りする天使に前年に亡くなった兄への想いが重なります。
オフィス・バロック(1977年)
ベルギーのアントワープ国際文化センターの招待で実現したアントワープ旧市街の建物のプロジェクト。
向かいの城館に訪れる観光客が建物の内部を見通せる仕掛けを作ろうと考案。
しかしそのプランはアントワープ市により制止され建物の内部のみのプロジェクトとなりました。
バロック期の画家ルーベンスの生誕400周年を祝っていたアントワープ。
1組の決まった要素が階層を昇り降りする音楽の楽譜をイメージし制作されました。
サーカス(1978年)
シカゴ現代美術館から依頼された集合住宅の改修プロジェクト。
水平方向に3つ・垂直方向に3つ・計6つの円によって切り取られた床と壁。
一部は螺旋のように繋がり複雑な構造をしています。
観覧者のために組み上げられたステージはまるでサーカスのよう。
人々がその中を周る円そして活動の場としての円であると説明しています。
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