シェルターインターナショナル学生設計競技2017

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_1
会期 2017年12月16日(土)13:00~17:15
会場 東京国際フォーラム
住所 東京都千代田区丸の内3-5-1[地図
アクセス 有楽町駅 徒歩4分
公式サイト なし

内容

アイデアコンペの公開最終審査『シェルターインターナショナル学生設計競技2017』へ行ってきました。

「現代におけるコモンズの再構築」をテーマに規模・立地・用途・プログラムを想定した個性溢れる作品が集結。

塚本由晴・トム へネガン・古谷誠章・大西麻貴・百田有希が審査委員を務めます。

農村や漁村には今でも入会地の山林や水域など、地域コミュニティが共同で管理・利用しているコモンズが存在しますが、都市部(特に日本の)にはほぼないと言っても良いでしょう。

それは近代化の過程で、土地も建物も物も私有か公有に塗り分けられ、通貨を通した交換と、税金を介した再分配による社会が、特に都市の空間として成立していったからです。

このような都市空間は人口が増加し、経済成長が続く限りは人々もそれなりに幸せなのですが、そこに陰りがみえはじめると弱肉強食の度合いを強め、格差の拡大などいろいろな不都合が出てきます。

これに対抗するために、都市においても人々の暮らしを包摂するコモンズの再構築が求められています。

また農村・漁村ではこれまで維持してきたコモンズであるところの自然資源が、人口減少により十分に利用できず、資源としての維持管理に支障を来たし始めています。

つまり、都市においても、農村・漁村においても、コモンズの再構築が求められていると言えます。

都市における共有の資源とは何でしょうか?

今まで通り農村・漁村の資源を維持管理することができるでしょうか?

どうすれば資源に対するアクセシビリティを確保できるでしょうか?

こうした問題に建築はどのように応答することができるでしょうか?

みなさんの大胆で楽しい提案を期待しています。

審査委員長塚本由晴氏からのメッセージ。

応募総数176作品の中から最終審査に残った最終審査5作品と奨励賞2作品のプレゼン。

提案内容に対する思考の浅さや視野の狭さをストレートに指摘される学生たち。

鋭いプロの質問に戸惑いながらも自分たちが思うコモンズを懸命に説明。

作者の意図やコンペのテーマとの関連性を正確に読み解こうとする建築家たち。

人それぞれに解釈が異なるがゆえに納得するまで繰り返される熱い議論。

 

真の豊かな生活とは何なのか?

様々な社会問題を改善するためにコモンズをどう再構築するのか?

 

「クライアントはもちろん社会を幸せにする建築を作っていってほしい。」

株式会社シェルタ―代表取締役木村一義氏からの温かいエール。

学生たちの多様な提案に私たちがこれまで当たり前としてきた価値観を変えることを迫られるコンペでした。

会場風景

入賞作品

公開最終審査でプレゼンを行った入賞作品の概要と審査員のコメントをまとめます。

<最優秀賞>都市の農場

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_24
設計 Max Shen(The Bartlett School of Architecture UCL)+Chloe Ong(Slade School of Fine Art UCL)/イギリス
内容 人々が生活する都市部と動植物を育てる農村部が共存する提案。 牧草地・搾乳場・鶏舎・畑で育てた乳製品・卵・野菜を新鮮なうちに市場や自販機で購入できる。
評価ポイント 自分が口に入れる物の生産過程を間近に見ることで生命の有難みを感じながら生活できる。
不足ポイント 牛などの大きな動物を飼うには広大な敷地面積が必要なことが計算されていない。

<優秀賞>藁の廟

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_25
設計 日野一貴+坪井里穂+山崎悠佑(日本大学大学院)+小室昂久(日本大学)/日本
内容 日干し煉瓦と藁でできた大地に還る新しい墓文化の提案。 無縁化した墓は風化し種を蒔きその場に咲く花として生まれ変わる。
評価ポイント 川の中州にある霊園まで船で渡るプロセスが非日常感を味わえる。
不足ポイント お墓参りに来た人が楽しめるアクティビティや人との交流が生まれる仕掛けが欲しい。

<入賞>CITY UNBLOCKED:RIGHT TO SPACE

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_26
設計 Asger Theo Taarnberg(The Royal Danish Academy of Fine Arts School of Architecture)+Julie Lejre(The Royal Danish Academy of Fine Arts School of Architecture)/デンマーク
内容 集合住宅が建ち並ぶエリアで区画毎に発生している余白にエコシェルターを設置する提案。 過度な消費社会に対応すべく工業化された農業のあり方に一石を投じる。
評価ポイント 地域住民が共同で動植物を育てる機能がコミュニケーションの活性化に繋がる。
不足ポイント 自給自足で食物をまかなう以外の広がりが乏しく既にどこかで実現していそう。

<入賞>野蛮人の思考

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_27
設計 成潜魏(東京大学大学院)/日本
内容 スラム街の廃材をブリコラージュし子供達の遊具や学習道具として生まれ変わらせる提案。 建築家がきっかけを与えることで子供達自身が考え物作りをする知恵が生まれる。
評価ポイント 実際のプロジェクト映像から子供達が楽しく遊ぶ様子が伝わってくる。
不足ポイント 貧困地帯ならではの環境問題など優先度の高い課題解決に繋がる提案が欲しい。

<入賞>縦横無尽

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_28
設計 田中雄大(東京大学大学院)+御供崇尚(早稲田大学大学院)/日本
内容 山梨県甲府市で生まれた"みち"と"無尽"という文化を活用し街の空洞化に歯止めをかける提案。 商業地区と住宅地を"みち"で繋ぎ共同の積み立てシステムである"無尽"で新しい街を作り上げる。
評価ポイント レンタルスペースとして貸し出すことで新たなコミュニティが生まれ経済も活性化する。
不足ポイント 特になし。

<奨励賞>YOBITSUGI Roof-garden

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_29
設計 Elizabeth Danielle Hardie(Architectural Association School of Architecture)+Marcus Tan Tze Haur(Singapore Institute of Management - Royal Melbourne Institute of Technology University)/シンガポール
内容 割れた器の欠損部分に新たな陶片を用いて継ぐ"呼び続ぎ"という技術を街に当てはめた提案。 戸建て住宅同士を屋根で繋いだ一続きのルーフガーデンで野菜や果物を育てる。
評価ポイント 遠方から見ると野原や花畑のような風景として四季折々の景観が楽しめる。
不足ポイント 住民同士が交流することで生まれる価値が構想されていない。

<奨励賞>EVENT-CUSTOM:ENVIROMENT

シェルターインターナショナル学生設計競技2017_30
設計 國清尚之(Liechtenstein university)+中村駿介(東京理科大学大学院)/リヒテンシュタイン+日本
内容 相撲の地方巡業を始めとしたイベントの持ち込みにより地域活性化を図る提案。 空中に浮かぶように建設された櫓はその土地の1つのモニュメントとなる。
評価ポイント 住民同士の交流が賑わいを見せた江戸時代の風景に遡るアイデアが面白い。
不足ポイント イベントが行われない時期に地域住民がどう活用するのか具体案が欲しい。

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