ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ_1
期間 2017年10月から順次公開
監督 メアリー・マクガキアン
出演 オーラ・ブラディ|ヴァンサン・ペレーズ|ジョルディ・ボネット|フランチェスコ・シャンナ|アラニス・モリセット|ドミニク・ピノン|アドリアーナ・L・ランドール
公式サイト トランスフォーマー

内容

天才建築家の相克する関係を綴った『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』を鑑賞しました。

南フランスの海辺に立つアイリーンの別荘に隠された嫉妬と欲望が絡まりあう愛憎のドラマを描きます。

1878年アイルランドの貴族の家に生まれたアイリーン・グレイ。

1898年からロンドンの美術学校でデザインを学び1902年からパリの芸術学校で芸術を学ぶ。

パリ万国博覧会で東洋の漆工芸に魅了され1905年にロンドンに戻り漆器修理店で働きながら技術を学ぶ。

1906年に再びパリに渡り日本人工芸家の菅原精造に師事し技術を学ぶ。

その後モロッコに渡り染色技術を学んだりととにかく知識欲の高い女性でした。

 

「Day Bed」「Bibendum」「Non Conformist」「Adjustable Table」「Brick Screen」など。

知性とセンスに溢れた家具を次々と生み出し続け気鋭のデザイナーとしてモダニズムを引率したアイリーン。

家具は人間のライフスタイルに結び付くという本質を理解し細部までこだわり抜かれたデザイン。

エレガントなオーラを放つ彼女の家具は生活を楽しむ余裕が必要なことを私たちに教えてくれています。

 

私生活では結婚という形に興味がないバイセクシャル。

良い物を創造し仕事で成功するためには1人じっくりと考える時間が必要。

何物にも縛られず自由であるために孤独に身を置くことを選択してきました。

 

1920年代に建築家兼評論家のジャン・バドヴィッチと出会い付き合い始めます。

1922年に自身の店であるジャン・デゼールをパリに開店。

ジャンは仕事の良きパートナーとしてショップの運営を手伝い建築の設計をアイリーンに教えました。

 

南フランスのロクブリュヌ=カップ=マルタンにジャンと過ごす別荘の建設計画を開始。

同時期に当時建築家として駆け出しだったル・コルビュジエと出会います。

コルビュジエが提唱する近代建築の5原則を取り入れたアイリーン。

1929年にアイリーンとジャンのイニシャルから文字って名付けた別荘E-1027が完成。

家具と建築そして内部と外部の境界線が曖昧で土地と一体化した家にはアイリーンの愛が注がれていました。

 

ところがその後アイリーンにとって3つのショックな出来事が起こります。

1つ目はE-1027の特集本でジャンは自分の名前だけを掲載しアイリーンの名前を掲載しなかったこと。

2つ目はE-1027のいたる壁にコルビュジエがフレスコ画を描いたこと。

3つ目は壁画の発表会でコルビュジエは自分の名前だけを公表しアイリーンの名前を公表しなかったこと。

このような経緯を経てE-1027はコルビュジエが設計したものと世間から思われていた時代がありました。

 

知性豊かで芯のある女性は非常に魅力的で多くの視線を集める。

自分のスタイルがある女性は特定の男性や男性社会の配下に囲われることを嫌う。

そんな強い女性を自分の配下に置けない男性はプライドが傷付き嫉妬する。

アイリーンの才能と功績を認めながらも嫉妬し恐れていた2人の男の本心が表れた行為と言えます。

 

第二次世界大戦でドイツ軍の侵略を受けて一時別荘を離れることに。

戦後アイリーンとジャンは再会し共にヨーロッパの復興プロジェクトに邁進しました。

 

1956年に肝臓がんでジャンが死去。

ジャンの所有物であり相続先が無かったE-1027はルーマニア政府の手に渡ると耳にしたコルビュジエ。

コルビュジエは資産家の知人に半ば無理矢理家を購入させます。

購入者自身はE-1027にあまり価値を感じていなかったため管理もずさんに。

 

1952年E-1027の近所にコルビュジエの妻と過ごす別荘としてカップ・マルタンの休暇小屋を建設。

1965年海水浴中に心臓発作を起こしコルビュジエは最も愛したその土地でE-1027に看取られながら死去。

1976年アイリーンはパリで亡くなりました。

 

2009年に行われたイヴ・サンローランとピエール・ベルジェのコレクションが出品されたオークション。

約28億円という破格で落札された椅子が話題を呼びデザイナーであるアイリーンに再び注目が集まりました。

 

飽くなき探求心で生涯を通して学びと実験を繰り返したアイリーン・グレイ。

自分の感覚を信じ心の声に耳を済ませ真っ直ぐに生きる姿勢に勇気をもらえる映画でした。

会場風景

トークショー

【日程】2017年10月28日(土)

【講演者】伊東豊雄

 

伊東豊雄氏の講演会に参加しました。

今回の映画や建築への取り組みについての話を簡単にまとめます。

 

実際にコルビュジエのスケッチを見ればわかる通り彼は物凄く人間的で生活的なデザイン。

コルビュジエが手掛けると力強く魅力的な空間に仕上がる。

一方でアイリーンは無駄を削ぎ落としたミニマリストで僕的には映画とは逆の印象。

コルビュジエが晩年を過ごしたカップ・マルタンでの生活は人として憧れる。

 

賞賛と嫉妬は表裏一体でクリエイター同士の嫉妬はよくあること。

皆自分の作るものが一番だと思っているし自分に自信を持つことは大切。

コンペで負けても次はもっと良い物を作ってみせるぞという創造のための原動力になる。

 

若い頃は住宅の設計しか仕事が無く自分の思想を充満させたがっていた。

今は公共建築に携わることが多く社会をよりよく変えていく責任があるため住宅設計とは大きく異なる。

最近はアジアでのプロジェクトに標的を絞っている。

コルビュジエは60代以降インドに度々訪れていた。

チャンディガールの都市計画は彼の代表作でアジアの自然には建築家を大きく感化する何かがある。

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