堀部安嗣展 建築の居場所
会期 | 2017年1月20日(金)~ 2017年3月19日(日) |
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会場 | TOTOギャラリー・間 |
住所 | 東京都港区南青山1-24-3[地図] |
アクセス | 乃木坂駅 徒歩1分 |
公式サイト | TOTOギャラリー・間 |
展覧会の内容
巧みな素材使いと収まりの美しい作品を手掛ける建築家『堀部安嗣展 建築の居場所』へ行ってきました。
建築が生まれるまでの過程を模型・設計道具・堀部氏が影響を受けた建築と共に紹介します。
Architectとは神に代わって風景を作ることが許された唯一の人
時代を経て人の記憶に残る作品には圧倒的な質の高さが必要
そこにある自然の美しさに従い1つ1つの仕事に真摯に向き合う。
建築家としての使命を全うする堀部氏の誠実な人柄が伝わる展覧会でした。
展示風景
堀部氏が手掛けてきた住宅の模型が並ぶシンプルな3階の展示室。
1つ1つゆっくり見ることができるよう沢山の椅子を設置。
丁寧に作られた温かみのある木の模型たち。
手に取って中を覗きながら楽しめる紙の模型たち。
堀部氏が手掛けた住宅の魅力を伝える雑誌たち。
堀部氏が愛する音楽グッズなど私物も多数展示しています。
ある町医者の死後に残された家具や医療器具を純真無垢の真っ白な空間に展示した「ある町医者の記念館」
周囲の風景とマッチしない姿から自責の念に駆られるなど大変思い入れの深い処女作となりました。
壁一面の窓に少し長めの軒を掛け光と闇それぞれの魅力を引き出した「南の家」
田園風景が織り成す四季の移ろいを上質な時間と共に楽しむことができるカフェ「イヴェールヴォスケ」
円形の螺旋階段に沿って沢山の知識が詰まった本棚と先祖を供養する仏壇を設置した「阿佐ヶ谷の書庫」
既存のけもの道を生かしその延長線上に設計した「竹林寺納骨堂」
1人でも家族とでも穏やかで楽しい時間が過ごせる中庭を中心にデザインした「荻窪の家」
日本人に所縁の深い縁側が眠っていた記憶を呼び起こし懐かしさを感じさせる「せとうちクルーズ船」
堀部氏の設計道具と図面。
堀部氏の設計の源流となった思い入れのある建築のスライドを上映。
リンゴ・スターが使用していたことで有名なラディック社のブラックオイスターは堀部氏の愛用品。
中庭のインスタレーション「音の庭」
竹林寺納骨堂で実際に使用されているベンチ。
堀部氏と OZA METAKSTUDIO とラボラトリーの共同デザイン。
全国にある堀部氏の建築や現場で拾ってきた自然の音に耳を澄ませ聴覚から建築を楽しみます。
4階の展示室では堀部氏の「立ち去りがたい建築」の謎に迫る短編映画を上映。
「建築が私にとってかけがえのない表現であるのは、自分の建築を介して、私と他者が、
お互いの内にある風景を見つめ合っているように感じるときがあるからです。
記憶も遺伝子も違うものどうしが、言葉や手続きを必要とせずに内なる風景を共有できたとき、
建築がつくりだした、あたたかく、淀みのない居場所を感じることができるのです。」
講演会
日程 | 2017年1月27日(金) |
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タイトル | 建築の居場所 |
講演者 | 堀部安嗣 |
堀部氏の建築設計に影響を与えた出来事を簡単にまとめます。
私の原風景
1967年に神奈川県横浜市鶴見区で生まれ子供の頃は總持寺でよく遊んでいた。
何十年も経ったある日訪れてみたが長年変わっていない道のおかげで迷わず歩けたことに驚いた。
人の記憶の継承に大きな影響を与える建築家の仕事の重要性を認識した。
生と死が共存する世界
1988年20歳の時にグンナール・アスプルンド設計の「森の墓地」を見にスウェーデンへ。
何も否定せず何も関与しないとても寛容な場所。
崇高かつ親密な表現に心を打たれ建築の道に進むことを決意した。
美しさとは何か
フランスの現代美術家ソフィ・カルが目の見えない人々に美のイメージを問う「盲目の人々」を観る。
「海」「緑」「魚」「星空」など目が見えないとは思えない回答が次々と返ってくる。
我々は視覚の中に美があると考えがちだが実際は五感で感じるものだと知った。