HOUSE VISION 2/2016東京展
会期 | 2016年7月30日(土)~ 2016年8月28日(日) |
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会場 | 臨海副都心J地区 |
住所 | 東京都江東区青海2-1[地図] |
アクセス | 青海駅 徒歩5分 |
公式サイト | HOUSE VISION |
展覧会の内容
住まいの新しい常識を発信するイベント『HOUSE VISION 2/2016東京展』へ行ってきました。
個と個の連携をテーマに「分かれてつながる/離れてあつまる」という暮らし方にスポットを当てます。
経済の停滞・人口の縮退・少子高齢化・災害の続発・ストレスの増大など多くの危機を迎えている日本。
そういう時代を生き抜くための具体的な処方箋と読み替えることもできるこれからの住まいの提案。
展覧会終了後は実際の家として使われたり木材を解体して再利用できる工夫がなされた木の香り漂う会場。
多様なアイデアに触れ生きるために無くてはならない家の在り方について考えさせられる展覧会でした。
展示風景
原寸大に具体化された12棟の展示ハウスが並ぶ会場。
屋台・書店・トークイベントなど様々な楽しみが用意されています。
【冷蔵庫が外から開く家】ヤマトホールディングス × 柴田文江
内側と外側の両方から開くもうひとつのドアを持つ家。
不在時の宅配便やクリーニングの受け渡しを容易にし集配業務や買い物の効率化を図ります。
【吉野杉の家】Airbnb × 長谷川豪
地域住民のコミュニティスペースとゲストの宿泊施設を併せ持つ吉野杉で造られた家。
Airbnb初となるコミュニティ構築基金を設立し伝統文化の維持や地域の活性化に役立てます。
【の家】Panasonic × 永山祐子
IoTによる様々な機能を内包し必要最低限の物で構成された家。
壁全体がスクリーンとなり映画鑑賞・ショッピング・メディカルチェックなどを可能にします。
【棚田オフィス】無印良品 × アトリエ・ワン
日本人の文化そのものである稲田の農村に建つサテライトオフィス。
天候や気分に合わせて農作業とデスクワークを選べる豊かな働き方を実現します。
【遊動の家】三越伊勢丹 × 谷尻誠 × 吉田愛
百貨店が施主と建築家を媒介しながら施主個人のライフスタイルに合わせて作られる家。
わびさび・余白・見立てという日本人の持つ美意識に準えたシンプルな内装。
百貨店の商品調達力により取り揃えたインテリアで施主自身が自由に空間をデザインできます。
【賃貸空間タワー】大東建託 × 藤本壮介
最小化したプライベート空間と最大化した共有空間で構成される賃貸住宅。
高性能の設備を完備したキッチン・バスルーム・ホームシアターを皆で所有。
世代や職業を超えた人々が集うことでこれまでにない空間価値と人との繋がりが生まれます。
【凝縮と開放の家】LIXIL × 坂茂
1つのユニットに凝縮した水回りと上方に処理された給排水システムを持つ家。
PHPパネルで作られた柱や梁の無い開放的な空間で暮らしに合わせたユニットを自由自在にレイアウト。
分かりやすい構造と軽くて丈夫な素材の特性を活かして災害時の仮設住宅としても活用され始めています。
【市松の水辺】住友林業 × 西畠清順 × 隈研吾
10.5センチの檜の角材で組み立てられた市松模様の水辺を持つ庭。
楓の木陰と冷えた水辺に涼を求める人々が集い語らう場を提供します。
【木目の家】凸版印刷 × 日本デザインセンター原デザイン研究所
触感コートとグラビア印刷という高度な印刷技術でできた木の質感を持つ家。
人の動きや身体情報を解析するセンサーを内蔵したシートが木材以上の緻密さと安定性をもたらします。
【内と外の間/家具と部屋の間】TOTO × YKK AP × 五十嵐淳 × 藤森泰司
扇形の部屋から放射状に突き出た5つの部屋を持つ家。
単なる壁の開口部に過ぎなかった窓に奥行きを持たせそれぞれの機能を集約。
外部と内部の間にある空間で生活するという新しい感覚を楽しめます。
【グランド・サード・リビング】TOYOTA × 隈研吾
軽くて錆びない炭素繊維の骨組みに伸縮性のあるストレッチ繊維の膜を組み合わせたテント。
ソーラールーフ搭載のプリウスPHVの電力と併用することで快適な住空間を持ち歩くことができます。
【電波の屋根を持つ家】CCC × 日本デザインセンター原デザイン研究所 × 中島信也
家族の位置情報や健康状態を確認できるスマートフォンサービスTONEで繋がる家。
離れた場所にいる家族のコミュニケーションをVRゴーグルを通して体験できます。
【冷涼珈琲店─煎】AGF × 長谷川豪
風通しの良い麻のテントの下でAGFのコーヒーが味わえる吉野檜でできた休憩所。
コーヒー豆の袋を想起させる麻の暖簾が揺れ動き人々を柔らかく迎え入れます。
再利用することを前提に汎用性の高い10.5センチの角材で組み立てられたイベントホール。
代官山の蔦屋書店がサテライト出展。
知識豊富なコンシェルジュが選んだ約3,000冊の住まいに関する書籍が並びます。
「CO-DIVIDUAL:分かれてつながる/離れてあつまる」
トークショー
日程 | 2016年8月7日(日) |
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タイトル | 「住まい」のこれからはどうなる? |
モデレーター | 白井良邦 |
コメンテーター | 原研哉 |
パネリスト | 青木弘司/猪熊純 |
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展について
Casa BRUTUS 副編集長:白井良邦
アレハンドロ・アルベラが掲げた「Reporting From The Front」をテーマに各国の現代建築を展示。
「en:art of nexus」をテーマに若手建築家12組の取り組みを紹介した日本館は審査員特別賞を受賞。
はしごの上からナスカの地上絵を見つめる考古学者マリア・ライヘの展覧会ポスターが印象的。
視点を変え様々な角度から物事を見ることの重要性を感じた。
建築家:青木弘司
東京都調布市の賃貸併用住宅のリノベーションションプロジェクトを展示。
既存の古い部分と新しく加える部分の関連付けを整理し「モノの縁」を緻密に織り上げるようデザイン。
過去を標本化するように分断するのではなく今までの時間とこれからの時間を並存させる。
その場の質が人間の主体性により変化しいつまでも新鮮で冗長性に溢れた空間を設計していきたい。
建築家:猪熊純
愛知県名古屋市のシェアハウスプロジェクトを展示。
入居者の部屋と共用部がパズルのように入り組み「個が自由に繋がる」ことができるようデザイン。
ホームパーティやイベントなど一般的な一人暮らしでは実現できないライフスタイルが生まれた。
水回りを集約することで施工費を抑えた按分床面積の密度が高い物件はオーナーにとってもメリットがある。
それぞれが考える住宅の未来について
Casa BRUTUS 副編集長:白井良邦
毎年1月に最先端の住宅を紹介する特集を行っている Casa BRUTUS。
住み心地の良いリアルクローズな家よりもビジュアルで目を惹くモードな家の掲載が多め。
施主の判断で自由度の高いデザインが実現するのが住宅の面白いところ。
20世紀の名作は1930年前後に集中しているためそろそろ21世紀の名作が出てくることを期待している。
建築家:青木弘司
藤本壮介氏はリアルクローズとモードを両立した建築で世界に高く評価されている貴重な建築家。
ラフな生活スタイルに移行する中でもモードを諦めず新しいデザインを提案し続ける姿勢が建築家には重要。
技術革新の閉塞感と技術ありきで物事を追い無理に合わせようとする流れに寂しさを感じている。
新しい技術はあくまでも従来の人間の生活スタイルを下支えする存在であってほしい。
建築家:猪熊純
一昔前の住宅やファッションはリアルクローズとモードが一致していた。
ル・コルビュジエ設計のフランスの住宅ユニテ・ダビタシオンも1952年の竣工当時はモードな存在だった。
普通や最先端の定義は国や住む人の価値観により異なると同時に時代の流れで変わるもの。
日本では地方のインフラはどんどん遮断されコンパクトシティになるため郊外の一軒家の購入は推奨しない。
展覧会ディレクター:原研哉
金利は下がる一方で資本主義も終わりに近づき世界はほころび始めている。
残るフロンティアは歴史あるものに価値を見い出すフロンティアか最先端技術AIのフロンティアの2つ。
今世界のトップ産業は製造業ではなく観光業なのに日本政府の対応スピードは遅くついていけていない。
人は自分を助けてくれるものにお金を使うことを理解し対応することがサービス提供者側が行うべきこと。