アジアの日常から:変容する世界での可能性を求めて
会期 | 2015年10月17日(土)~ 2015年12月12日(土) |
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会場 | TOTOギャラリー・間 |
住所 | 東京都港区南青山1-24-3[地図] |
アクセス | 乃木坂駅 徒歩1分 |
公式サイト | TOTOギャラリー・間 |
展覧会の内容
創設30周年を記念した展示会『アジアの日常から:変容する世界での可能性を求めて』へ行ってきました。
日本・タイ・シンガポール・ベトナム・中国のアジア各地から建築家を集結。
特色の異なる建築と同時に音・匂い・味などリアルな要素も再現しています。
近くて遠い・似ているけど異なる・知ってるようで知らない各国の風土や文化。
その中で共通していたのは関わる人々との交流を大切にし自然に敬意を払いながら建築を作る姿勢でした。
建築家として人として自分達に出来ることに真摯に取り組む日常。
現代社会が抱える様々な問題を建築の力で少しでも改善していこうとする熱意が伝わる展覧会でした。
展示風景
エルウィン・ビライ氏と藤原徹平氏が語るアジアの現状と展覧会への思い。
今回出展している建築家の活動拠点マップ。
【中国】チャオ・ヤン「地方都市への参与と介入」
3階の展示室の壁にプロジェクトの映像と模型を展示。
クライアントが描くライフスタイルやビジネスへの思いに応えようとする日常の様子を映し出します。
【シンガポール】リン・ハオ「往時の風景へ」
3階の展示室の中央に土を盛り模型と植物を展示。
気温も湿度も高い熱帯気候の土地に繁茂する自然とそれに溶け込む建築の生気や活力を伝えます。
【ベトナム】ヴォ・チョン・ギア「地球のためにできること」
3階の中庭いっぱいにバンブーの森を構築。
地球環境問題を少しでも改善するべくグリーンを取り入れたデザイン性の高いプロジェクトを提示します。
竹の香りを嗅ぎながら4階へ。
【日本】大西麻貴+百田有希「経験の一部としての建築」
4階の展示室手前にイメージ素材と模型を展示。
周辺地域との関係性をありのまま受け入れ相互作用により生み出された建築を紹介します。
【タイ】チャトポン・チュエンルディーモル「デザイン屋台」
4階の展示室奥に可動式の屋台を置き写真・図面・模型を展示。
バンコクの町や日常を精密に再現したリサーチ結果から日本にない面白い文化を切り取っています。
シンポジウム
日程 | 2015年10月17日(土) |
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タイトル | Nature, Architecture, City and Everyday Life in the Shifting World |
モデレーター | エルウィン・ビライ |
コメンテーター | 藤原徹平 |
パネリスト | チャオ・ヤン/リン・ハオ/ヴォ・チョン・ギア/大西麻貴+百田有希/チャトポン・チュエンルディーモル |
TOTOギャラリー・間創設30周年を記念したシンポジウムに参加しました。
今回の展覧会やアジア各地で活躍する建築家たちの取り組みの話を簡単にまとめます。
プライオリティの高いギャラリー
【会場デザイン】藤原徹平
世界に耳を澄まし数多くの建築家たちの活躍を紹介してきたTOTOギャラリー・間。
訪れる人に様々な感情と問いを与えるメッセージ性の高い知的な場所。
その30周年を記念するに相応しいエネルギーを感じる展覧会だと思う。
会話は空気
【キュレーター】エルウィン・ビライ
ビッグデータを保持し操るインターネット企業が世界をコントロールする現代社会。
スマートフォンをはじめデジタル機器を介したコミュニケーションで完結しがちな現状を問い直したい。
今回の展覧会を通してFace to Faceで会話することの素晴らしさを改めて感じてほしい。
地元への歩み寄りと関係づくり
【中国】チャオ・ヤン
2012年に雲南省の大理市に移住。
地元の石・木材・労働力を使うことを重視している。
大都市と違いモダニストの考えを通すのが難しい地域でクライアントの説得に苦労することも多い。
感性の豊かさは空間設計から
【シンガポール】リン・ハオ
違う部屋同士の見通しが良い昔ながらのワンフロアーの家で育った。
その影響で現在のオフィスも週末はBBQやパーティーができるオープンスペースを設けたデザインに。
1つの場所で色々なことを感じられる環境こそ豊かさだと考えている。
人間は自然に生かされている
【ベトナム】ヴォ・チョン・ギア
東南アジア有数の経済都市となったホーチミン市の緑の少なさに危機を感じている。
文明が発達するほど人間は幸せになれると思い込んでいるが実際はそうではない。
House For Treeを合言葉に建築に緑を取り入れる提案を続けている。
全ての体験が建築の実になる
【日本】大西麻貴+百田有希
八百屋のようなガレージのような扉のないオープンな設計事務所。
季節の移ろいを肌で感じ地元住民が気軽に出入りすることで様々な影響を直に受ける。
建築とは直接関係のない体験1つ1つが新しいプロジェクトのインスピレーションを生む種となっている。
心地良い曖昧さ
【タイ】チャトポン・チュエンルディーモル
家を外界と隔てるために設けられる垣根について。
石の塀で内と外にきっぱり分けるのではなくもっと曖昧な状態でもいいのではないかと思い自邸で実装。
ブラインド式の塀にすることで周囲の道路や近隣住民の全てが1つの建築になった。
今回の展覧会について
インターネットの発達により何でも簡単に手にすることができる現代人に疑問を投げかける。
希薄になりがちな社会との結び付きを問い直すことが今回の大きなテーマ。
巨匠の回顧展ではなくこれからのアジアの建築界を担っていく若手を選出。
建築が持つ強さとまだ見ぬ可能性を見に来てくれた人たちと一緒に考えていきたい。
アジアの現状と建築の関係性について
- スピードと量が優先される経済成長期には良い建築は生まれない。
- アメリカの歴史を振り返っても1929年あたりの作品が一番良かった。
- 経済的に苦しい状況にある今の日本こそ様々な制限から絞られる知恵により名作が生まれる可能性がある。
- 大都市のプロジェクトはどれも大きな設計会社が担っているので地方に移住した方が若手は活躍できる。